今回から何回かに分けて「中小企業の退職金制度や年金制度について改めて考える」というテーマでの記事を投稿したいと思います。
また、その際にはできる限り数理的な分析を行って、実証的に考えてみようと思います。
そういう意味で「アクチュアリーが考える退職給付制度」という表題をつけました。
消費者物価指数(対前年比)の推移

私が中小企業の退職給付制度に問題意識を持つようになったきっかけは、最近のインフレ傾向です。
上のグラフで示したように、長きに亙りデフレあるいは低インフレ傾向が続いた我が国も、2022年以降ははっきりとインフレに転じています。
グラフをみると、対前年同比で2%を超える物価上昇が4年も続いていることが分かりますね。
物価上昇の背景について論説等では、「2021年頃から始まった世界的なインフレ」・「ロシアのウクライナ侵攻による食料や資源高」・「内外金利差の拡大や国際収支構造の変化による円安の進行」・「人手不足による賃金上昇」などがあると指摘されています。
そのうち、世界的なインフレやロシア・ウクライナ問題、あるいはイラン・米国問題などは一過性のものだとしても、国際収支構造の変化や人手不足傾向の悪化などは今後も続くと考えられます。
すなわち物価上昇傾向、インフレ傾向は今後も継続する可能性が高いと予想されます。
インフレが続くことを前提にすると、アクチュアリーである私が心配になるのは「インフレによる年金制度への影響」です。
よりストレートに言えば「インフレによる将来の年金額(実質価値)の目減り」の問題です。
公的年金(厚生年金、国民年金)の場合は、給付額が賃金上昇率に連動しますので、インフレがあっても実質価値は維持されます。
(ただし、現在はマクロ経済スライドが行われていますのでその影響により実質の給付水準は徐々に低下しています。)
しかし、事前積立型の年金制度ではインフレ対応は困難であり、インフレにより将来の給付額の実質価値は徐々に目減りします。
多くの中小企業が利用している中退共は、特に大きな影響を受けると考えられます。
また、総合型のDB制度でインフレへ対応をする場合は、追加のコストが事業主に発生します。
今後の記事では、中小企業が利用している各制度についてインフレの影響を考えてみます。
例えば、中退共・DB・DC等の各制度について、
・インフレによる将来給付額の目減りはどの程度なのか?
・インフレによる目減りへの対応策はあるのか?
・インフレを前提とした場合、制度の廃止や他制度への移行をした方が良いのか?
・インフレを前提にした場合、従業員・事業主にとってのメリット・デメリットは何か?
・インフレを前提とした場合、従業員・事業主にとってはどの制度を選択するのが適切か?
などを考えてみたいと思います。