今回の記事は、有期雇用社員の定義についての続きです。
まず、厚労省パンフレットの該当部分を引用します。
前回の記事に書いたように、キャリアアップ助成金の対象となる有期雇用社員の要件を整理すると以下の3点に集約されます。
【ポイント①】賃金の仕組みが正規社員と違う就業規則の適用を受けている労働者
【ポイント②】有期社員就業規則を6か月以上適用されている労働者
【ポイント③】契約期間が有期である労働者
ポイント①についてはすでに説明しましたので、今回はポイント②とポイント③について解説してみます。
ポイント②は「賃金の仕組みが正規社員と違う就業規則の適用を6か月以上適用されている」という要件です。
したがって、この要件を満たすためには、「正社員転換の6か月前には有期雇用者就業規則を整備することが必要」だと分かります。
私に照会をしてくるお客さんの中には、「正社員転換の1ヶ月前に計画書を提出しようとしたところ、有期雇用社員に関する規定の必要性を(ハローワーク担当者に)指摘された」という人が結構多いです。
はっきり言ってこれでは手遅れです。
中には柔軟な対応をしてくれる担当者もいるようですが、原則的には「正社員転換の6か月前までには、キャリアアップ助成金の要件を満たした有期雇用社員就業規則の整備が必要」と言えます。
この点を踏まえてこの助成金の受給までの標準的なスケジュールを表にしてみました。
就業規則を整備してから6か月後に正社員転換、そこから6か月後に1回目の支給申請、さらに6か月後に2回目の支給申請となります。
標準的なスケジュールであっても助成金受給のための準備を開始してから、2回目の受給が完了するまで2年近くの時間がかかります。
また、労働局による審査が遅れれば、もっと時間がかかることになります。
計画的な取り組みが重要だと言えますね。
次にポイント③の「契約期間が有期である労働者」である要件についてです。
当たり前のようですが、大事なことは「有期雇用社員の就業規則に、契約期間が有期であることを明記する」という点です。
例えば、厚労省の有期雇用労働者のモデル就業規則では、労働契約の期間について以下のように規定しています。
しかし、これでは契約期間が有期かどうか分からないですね。
「労働契約の締結に当たって期間の定めをする場合には」という条件が入っていますので、労働条件通知書を確認しなければ有期か無期かは分かりません。
冒頭に載せた厚労省パンフレットには、「適用される雇用区分の就業規則等において契約期間の定めに係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者として取り扱います」という注意書きがあります。
この注意書きを踏まえると、有期雇用社員就業規則において、以下のような契約期間を明確にする規定を設けることが望ましいと考えます。
【例1】
第××条 契約社員とは、第×章(採用)に定める採用に関する手続きを経て、1年以内の期間を定めて契約社員の呼称で採用された者をいう。
【例2】
第××条 パートタイマーとは、第×章(採用)に定める採用に関する手続きを経て、1年以内の期間を定めてパートタイマーの呼称で採用された、週所定労働時間が正社員より短い従業員または時給制で勤務する従業員をいう。
(ご参考)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)を受給するためには、上記したようないくつかの注意点があります。
最近は、注意点をおろそかにしたために不支給になるケースも急増しているようです。
そこで、お客様のお役にたつよう、注意点等を整理した資料を作ってみました。
ご関心のある方はご覧になってみてください。