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キャリアアップ助成金と就業規則

キャリアアップ助成金は数ある助成金の中でも、最も利用されているものです。
例えば、令和6年度の厚労省の予算概算要求に関する資料をみると、キャリアアップ助成金(人への投資分)の要求額は317億円となっており、令和5年度当初予算額の268億円から大幅に増加しています。

これに対し業務改善助成金(賃上げを伴う設備費用等を助成する)の要求額は13億円ですから、厚労省がいかに非正規労働者の正社員化に力を入れているかが伺えます。

私も、企業の方から時々、キャリアアップ助成金に関する照会を受けます。
なかでも多いのは、「正社員化コースの申請に必要な就業規則の修正方法」に関する照会です。
昨年のことですが、あるお客から「今まではこの就業規則で審査を通過したのに、今回はハローワークから修正を指示された。なぜか?」という照会を受けました。

キャリアアップ助成金申請の要件は、令和4年度から厳しくなっています。
私に照会をしたお客はそれをご存じでなかったため、「前回は通ったのに、今回はなんで通らないのか?」という疑問を持ったわけですね。

令和4年10月以降の「有期雇用から正社員」または「無期雇用から正社員」への転換の場合、その正社員の要件について以下の2点が改正になりました。
①賞与か退職金いずれかの制度かつ昇給の適用が必要
②正規雇用の試用期間中である者の転換は対象外

(出所)「キャリアアップ助成金パンフレット(令和6年度版)」p.18

ここで①については、キャリアアップ助成金のパンフレットp.18に以下の説明があります。

ご照会を頂いた企業の就業規則を確認したところ、昇給については上記の要件を満たしていましたが、賞与については「支給することがある」という規定でした。
そのためハローワークから指摘されたものです。

また、正社員の就業規則において試用期間を設けていることは、ごく一般的だと思います。
厚生労働省が公表しているモデル就業規則でも第6条に試用期間の規定があります。
この規定を普通に読めば、「有期雇用社員を正社員化した場合も最初の×ヶ月は試用期間」になります。

しかし、キャリアアップ助成金では、試用期間中は正社員には転換されたものとは見なしません。
パンフレット18ページの上の箱の中に以下の記載があります。

この要件を満たしてキャリアアップ助成金を受給するためには、就業規則の試用期間の条項に「有期雇用または無期雇用から正社員に転換した者については試用期間は設けない」といった規定を設けることが有効です。

以上は正社員の就業規則に関する留意点です。
キャリアアップ助成金では、さらに有期社員の就業規則についても注意点があります。
パンフレットのp.18の下の部分に記載があります。

(出所)「キャリアアップ助成金パンフレット(令和6年度版)」p.18

この用件はちょっと分かり難いですが、要は「有期雇用社員の賃金の額または計算方法を正社員と異なるものにし、それを有期社員の就業規則で規定する」ことが必要ということになります。
同一労働同一賃金の思想からするとやや違和感がありますが、そこは割り切って考えざるを得ません。