2025年4月入社者に対する採用活動がそろそろ活発になる時期ですね。
政府の要請を踏まえると、標準的なスケジュールは以下の通りとなります。
広報解禁日:大学3年の3月1日(例:2025年卒の場合は2024年3月1日)
選考解禁日:大学4年の6月1日(例:2025年卒の場合は2024年6月1日)
内定解禁日:大学4年の10月1日(例:2025年卒の場合は2024年10月1日)
採用担当の方はこれから大変な時期を迎えることになると思います。
私もバブルの頃に生保会社人事部にいたので、採用シーズンはほぼ毎日、面接に駆り出されていました。
採用面でも同業他社に後れを取らないことが使命だったので、採用担当者は毎日夜遅くまで、場合によっては会社に泊りで、学生に連絡をとっていたものです。
ところで先日、あるお客からこういう質問をされました。
採用にあたって募集要項に初任給を記載することになる。
しかし今年はベアを予定しているので、初任給額も増加することが予想される。
ベアが確定しない段階で、ベアの予想額を織り込んだ初任給を提示することに問題はないか?
物価上昇により今年度は久しぶりにベースアップを行う企業が多いと思います。
初任給もベアで上がりますが、採用に関する広報解禁日の3月1日には、ベアの労使交渉が済んでいない企業が大半でしょう。
そのために上記のような疑問が出るのだと思います。
結論をいえば「虚偽や過大でなければ初任給の(ベア後の)予想額を提示する」ことには問題はありません。
求人の際に提示する情報は「あくまで労働条件の目安」でしかありませんので、多少変動することは、当然にありうることですね。
なお、厚労省のHPにこのテーマに関するQ&Aが掲載されています。
引用してみましょう。
「労働基準法第15条には、労働条件の明示が定められていますが、この条文で言う労働条件の明示とは労働者個々人に対して書面で明示される労働条件のことです。つまり、求人誌やハローワークに掲載されている求人票はあくまでも募集の際に提示する労働条件の目安であり、労働基準法第15条で定める労働条件の明示には該当しません。 なお、ハローワークに掲載されている求人票の条件と実際の条件が異なる場合は、まずはハローワークにご相談ください。」
また、この問題に関連する判例も参考になります。
この事案で裁判所は判決理由で以下の通り述べています。
「本件求人票に記載された基本給額は「見込額」であり、文言上も、また次に判示するところからみても、最低額の支給を保障したわけではなく、将来入社時までに確定されることが予定された目標としての額であると解すべきであるから、控訴人らの右主張は理由がない。
すなわち、新規学卒者の求人、採用が入社(入職)の数か月も前からいち早く行われ、また例年四月ころには賃金改訂が一斉に行われるわが国の労働事情のもとでは、求人票に入社時の賃金を確定的なものとして記載することを要求するのは無理が多く、かえって実情に即しないものがあると考えられ、《証拠略》によれば、労働行政上の取扱いも、右のような記載を要求していないことが認められる。」
当然の判断だと思いますね。
以上の情報を踏まえると、採用を予定している企業は、「(虚偽や過大ではない範囲であれば)初任給の見込額を提示」しても、問題ありません。