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コラム

総合基金の思い出 ~ ヤジと怒号の代議員会

中小企業が加入できる企業年金制度として、現在はDB年金DC年金中退共などがあります。
それらに加えて以前は総合型の厚生年金基金がありました。

主に中小企業が加入していて、例えば「〇〇県建設業厚生年金基金」といった名称で、最盛期には、全国に500を超える総合型の厚生年金基金がありました。
しかし、財政悪化やAIJ事件などにより、制度は縮小に向かい令和4年3月末ではわずか5基金が残っているだけです。

厚生年金基金数の推移

(出所)2023年7月24日、第25回社会保障審議会企業年金・個人年金部会資料

今回はコラムとして、総合基金の思い出を書いてみようと思います。
私は、2001年から2006年まである生保会社で企業年金数理室長を務めていました。
同時に複数の厚生年金基金の指定年金数理人も担当していました。

主に担当していたのは総合型基金です。
最も多い時期で北海道から鹿児島まで10の総合基金を担当していました。
当時は、2001年から2003年までの3年連続のマイナス運用により、総合型基金の多くが年金財政に苦しんでいた時期です。
そのため、代議員会や理事会が紛糾することもありました。

最も記憶に残っている経験を書いてみます。
ある県のトラック業界の基金での出来事です。

常務理事から予算代議員会への出席を求められたことがあります。
予算書は基本的に常務理事が作成するので、年金数理人は関与しません。
数理人が出席するとすれば、法改正等の情報提供を行うとか、あるいは決算に備えた情報提供を行うとかが目的であり、予算書自体の説明は常務理事が行います。

さて、当該のトラック基金で常務理事が予算書の説明を始めてしばらくしてヤジが始まりました。
説明の仕方が「単に予算書を読み上げる」というものだったので、時間もかかりますし、ポイントも分かりません。
年金財政悪化にストレスを感じていた代議員がイライラして、ヤジを飛ばし始めたわけです。

そのうち「数理人に説明させろ」という声が大きくなり、常務がとうとう「高松さんお願いします」と振ってきました。
そう言われたら断ることはできません。
初めてみる予算書をつかって、ポイントだけを説明しました。

それでも代議員は収まりません。
「いったい掛金はどれだけ引き上げるんだ」と、予算には関係のない質問が始まりました。
決算も確定していませんから、はっきりしたことは、当然ながら答えられませんね。

今から思えば要領の得ない回答をしたと思いますが、質問が続くとともに、ヤジと怒号が増えてきました。
正直言って代議員の皆さんの気持ちは痛いほど分かりましたし、切ない気分で孤立無援の心境で立ちすくんでいたと思います。

その場が、どのように決着したのかは、良く覚えていません。
おそらく理事長が場を納めてくれたのだと思います。

私が担当していた総合基金で現在も残っている基金はありません。
(総合型DBとなった基金はあります。)
制度運営に伴うリスクに耐えられず、すべての基金は解散または代行返上を選択しました。
今となっては「総合基金での苦労は、何のためだったのかな」というのが、率直な感想ですね。

そのように考えているので、中小企業の方に企業年金の選択肢を問われた時はいつも、確定拠出年金(DC年金)をお勧めしています。