業務改善助成金を簡単にいうと「従業員の賃金を引き上げ、かつ、生産性向上に資する設備投資等を行った企業に、設備投資費用の一部を助成する」ということになります。
ここで疑問が生じますね。
「賃金はいつ引き上げれば良いのか?」という疑問です。
「最低賃金引上げによる賃金引き上げも対象になるのか?」という疑問です。
私も複数の企業から照会を受けたことがあります。
最低賃金の引き上げと業務改善助成金の関係については、厚労省リーフレットの3ページの下の部分に「賃金引上げにあたっての注意点」として、解説されています。
ただ、例によって分かりにくいし、見にくいので、書き直してみました。
上の図にある通りで、新しい最低賃金が発効される10月1日以降に引き上げても、業務改善助成金の対象にはなりません。
最低賃金引き上げに対応しないことは違法ですから、事業主が賃金を引き上げることは義務です。
義務である最低賃金引上げに対して、助成金という形で国が支援を行う意味はありませんから、対象にならないのは当然だと思います。
しかし、注目すべきことは、「発効日(10/1)の前日である9月30日までに最低賃金引上げに対応した賃上げを行った場合は、業務改善助成金の対象になる」ということです。
前倒しで最低賃金引上げに対応する賃上げを行った場合は、業務改善助成金の対象になります。
事業主の立場に立つと、「どうせ10月に賃上げをしなくてはならないのなら、前倒しで9月中に賃上げをして業務改善助成金をもらおう」と考えるのが普通だと思います。
実際、令和4年度の神奈川県での月別の交付申請の件数をみると、下のグラフのように9月に急増しています。
また、以前に書いたように、今年は業務改善助成金の交付申請が急増しているようです。
全国平均で50円という最低賃金の大幅な引き上げが行われますので、発効前である9月までに交付申請を行う企業が急激に増えているのだろうと考えています。
業務改善助成金を申請するためには、賃金引上げに関してもう一つの注意点があります。
それは「事業場内最低賃金の引上げを行う際には、新しい事業場内最低賃金を就業規則等に定めることが必要」ということです。
就業規則に「事業場内最低賃金を規定」している企業は少ないと思いますので、何だか違和感のある要件です。
しかし、要件として決められている以上は、仕方がないですね。
以下のような規定を就業規則に盛り込むことになります。
(ご参考)
今回の記事でもお分かりになると思いますが、業務改善助成金の仕組みには分かり難い部分があります。
分かりやすさを意識して、特に重要なポイントを整理した資料を用意してありますので、ご関心のある方はご覧になってみてください。