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日本の将来推計人口① ~ 少子化・高齢化はさらに深刻に

4月26日に「日本の将来推計人口(令和5年推計)」が国立社会保障・人口問題研究所より公表されました。
前回の平成29年推計から6年ぶりの推計となります。
本来は令和4年に公表されるはずでしたが、コロナ禍により1年遅れの公表となったものです 。
今回は推計結果の概要を確認してみたいと思います。

すでに報道されているように、今回推計では出生率の仮定が前回よりも低下したにもかかわらず、50年後の人口は前回よりも改善しています。
これは、死亡率が改善したことと外国人の流入を前回よりも多く見積もったことが主要因です。
ただし、少子化および高齢化の状況は前回よりも深刻さを増していると言えるます。

まず概要を確認してみます。

日本の将来推計人口(令和5年推計)《結果および仮定の要約》

(出所)第23回社会保障審議会人口部会(2023年4月26日)より作成

上の表は今回推計の仮定と結果の要約をまとめたものです。
主なポイントを箇条書きにしてみましょう。

①近年の出生率の低下傾向を反映して、長期的な出生率の仮定は前回よりも低く設定している。
中位仮定の合計特殊出生率の仮定は1.36(前回は1.44)である。

②死亡率の仮定は前回よりも低下している。
中位仮定の平均寿命は、男性が前回の84.95 歳から85.89 歳へと約1 歳、女性は91.35 歳から91.94 歳へと約0.6 歳ほど延びる見込みである。

③外国人入国に関する仮定は前回を大きく上回っている。
これは、コロナ禍前までの外国人入国の実績を基に設定したためである 。

④50年後(2070年)の総人口は仮定中位で8,700万人と現在(2020年)よりも約3割減少する。
ただし、前回推計よりは改善している。
その主たる要因は外国人の流入超過である(2070年は人口の約1割が外国人となる)。

⑤50年後(2070年)の0~14歳人口は仮定中位で797万人と現時点からほぼ半減する。
また、前回推計よりも減少している。
これらの主たる要因は出生率の低下である。

⑥15歳~64歳人口は50年後(2070年)に4,535万人(仮定中位)と現時点よりも約4割減少する。
前回推計よりは増加しているが、その主要因は外国人の流入である。

⑦65歳以上の人口は前回推計よりも増加している。
その主たる要因は死亡率の改善と外国人の流入である。

次に、中位仮定の推計結果についてより詳細に確認してみます。

総人口および年齢群団別内訳(中位仮定)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所HP等より作成

上のグラフは今回推計(中位仮定)に基づいて総人口および年齢群団別内訳の推移を見たものです。
このグラフからは、以下のように、かなり厳しい未来が待っていることが分かりますね。

①2020年時点で1億2615万人の総人口は今後も減少が続き、2031年に1億2000万人を下回る。
2056年には1億人を下回り、50年後の2070年時点では8,700万人と現在の約7割まで縮小する。

②生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,726万人をピークとして減少を続け2020年時点では7,509万人となっている。
今後も減少傾向は変わらず、2032年に7,000万人を割り、2043年には6,000万人も下回る。
50年後の2070年には4,535万人と現在の6割まで減少する。
ピークだった1995年と比較すると、ほぼ半分まで減少することになる。

③15 歳未満の人口のピークは1978 年の277万人である。
その後は減少傾向が続いていおり、2020年時点では150万人とピークの54%まで縮小している。
今後も減少が続く見通しとなっており2070年では約80万人と推計されている。

④65歳以上の人口は当面は増加傾向にあるが、2050年からは減少に転ずる。
65歳~74歳の前期高齢者数は2042年をピークとして減少傾向に変わる。
75歳以上の後期高齢者数は2055年をピークとして減少に転ずる。
50年後の2070年の75歳以上の人口は2,180万人となり、全国民(8,700万人)の25%を占めることになる。
つまり日本に住む人の4人に1人は75歳以上になると見込まれる。

総人口における年齢群団別占率(中位仮定)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所HP等より作成

のグラフは年齢群団別の占率を表しています。
ポイントは次の通りです。

①高齢化率(65歳以上人口の占率)は2020年時点で28.6%である。
今後も少子高齢化により、高齢化率は上昇を続け50年後の2070年には38.7%となる。
ちなみに50年前の1970年の高齢化率は7.0%である。

②なかでも75歳以上の後期高齢者の占率が増加する。
現在は14.7%であるが、50年後には25.1%まで上昇する。

③15歳未満の人口占率は出生率の低下により減少傾向を続け、2050年には10%を割り込む。

次に、出生数と死亡数に着目してみましょう。
グラフを見るだけで暗い気持ちになりますね。

出生数と死亡数の推移(中位仮定)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所HP等より作成

①日本人の出生数は1949年の約269万人をピークにして減少傾向が続いている。2016年に初めて100万人を割り込み、2020年は84万1千人となっている。
なお、速報ベースだが2021年は80万人を割り込む見込みである。

②出生数が減ることにより、将来に子どもを生む女性の数も減るため、少子化が少子化を招く悪循環に陥る。
今回の推計では2043年に70万人を下回り、50年後の2070年の出生数は50万人となっている。

③一方で死亡数は増加を続け、ピークの2040年には165万人まで増加する。
その後は減少傾向に転ずる。

最後は平均寿命の推移です。
下のグラフで分かるように、死亡率の改善傾向を反映して、平均寿命はゆるやかに延び続けます。
特に、女性の平均寿命(2020年時点で87.72歳)は2045年に90歳を超え、50年後の2070年には91.94歳となることが見込まれます。
また、男性についても現在の平均寿命81.58歳から50年後の85.89歳まで改善する見込みです。

平均寿命の推移(中位仮定)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所HP等より作成